卓話Speech
2026年4月17日(金)(第2774回)例会 No.30
子どもの未来を拓く『ひとりも取りこぼさない』地域社会へ

- 有限会社ジャスティス 代表取締役
- 藤野 直子様
本日は、一般社団法人愛知こども応援プロジェクトの取り組みについてお話しさせていただきます。もともとは名古屋名東ロータリークラブの中で、2017年に子ども支援の仕組みを立ち上げたことが始まりです。その後、活動が大きく広がり、現在は一般社団法人として外に出て活動しておりますが、「名古屋名東ロータリークラブ発祥の団体」という位置づけで活動を続けております。
私どもは、子ども食堂や学習支援を自ら運営するのではなく、愛知県内でそうした活動を行っている団体が「やめないで続けられるように」後方支援を行っています。現在、約320団体と連携し、食料支援や学習支援、進学支援、自立支援、就労支援など、多角的な支援を行っています。
日本では「相対的貧困」という考え方で貧困が測られており、最新の調査では子どもの貧困率は11.5%、いわゆる9人に1人が貧困状態にあります。特にひとり親家庭では44.5%と、約2人に1人という非常に厳しい状況です。また、生活が苦しいと感じている世帯は54%を超えており、統計には表れにくい「見えない貧困」が広がっています。
こうした状況の中で起きている大きな問題の一つが、経済格差によって生まれる教育格差です。文部科学省の調査でも明らかになっている通り、世帯年収が高いほど子どもの学力は高くなる傾向があります。これは決して子ども本人の努力や能力だけの問題ではなく、育つ環境による影響が大きいということです。
実際、教育には多くの費用がかかります。学習塾や習い事、教材費など、家庭がどれだけ教育にお金をかけられるかによって、子どもが得られる学習機会には大きな差が生まれます。もちろん、厳しい環境の中でも努力して成果を出す子どももいますが、全体として見ると、経済状況が学力に影響しているのは明らかです。
さらに、学習のつまずきは早い段階で起こります。特に小学校2年生頃、掛け算や漢字でつまずいてしまうと、その後の学習全体に影響が出てしまいます。本来であれば家庭でフォローすることが望ましいのですが、困難を抱える家庭ではそれが難しい場合が多く、結果として学力差が広がってしまいます。
また、教育格差は単なる学力の問題にとどまりません。子どもたちは「どうせ自分はできない」「無理だ」といった諦めの気持ちを持つようになり、自己肯定感の低下や社会的孤立にもつながっていきます。これがやがて進学や就職にも影響し、貧困の連鎖を生む要因となっています。
加えて、近年注目されている「非認知能力」も重要です。忍耐力や協調性、意欲、コミュニケーション能力といった数値では測れない力は、幼少期から9歳頃までの経験によって大きく育まれるとされています。お腹いっぱい食べる、楽しい時間を過ごす、安心できる環境にいるといった経験が、子どもの将来に大きな影響を与えます。一方で、厳しい環境の中でそうした経験が不足すると、成長にも影響が出てしまいます。
このような背景から、家庭や学校以外に安心して過ごせる「第三の居場所」が非常に重要になります。子ども食堂はその代表的な存在であり、単なる食事提供の場ではなく、安心できる居場所であり、学習支援や地域とのつながりを生む場でもあります。
しかし、子ども食堂は誰でも立ち上げることができる一方で、継続することが非常に難しく、場所・人材・食材の確保、安全管理、情報発信など、多くの課題があります。そこで私どもは、そうした活動を支える後方支援を行っています。
活動の中で特に重視しているのは、「まずお腹を満たす」ということです。愛知県内15か所に食料支援の拠点を設け、支援物資を届けていますが、これは単なる配布ではありません。支援物資は、困難を抱える家庭とつながり続けるためのツールです。最初は扉を少し開けて受け取るだけだったご家庭が、回を重ねるごとに少しずつ心を開き、やがて中に入って話ができるようになる、そうした関係づくりにつながっています。
その中で、企業の皆様からのご支援は大きな力となっています。遠州屋様からは、コロナ禍の頃から継続して高品質なお菓子をご寄付いただいております。社長様が「子どもに喜ばれるか」と心配されていたこともありましたが、現場では「子どもほど美味しいものが分かる」と言われるほど、大変喜ばれています。こうした体験が、子どもたちの心の豊かさにつながっています。
また、名北工業様には寄付型自動販売機の設置にご協力いただいております。この自販機は、1本売れるごとに売上の一部が「実家基金」として寄付される仕組みで、継続的な支援を可能にしています。お話をさせていただいた際には、その場で設置を決めていただき、大変感謝しております。
この「実家基金」は、困窮支援ではなく「教育機会を逃さないための支援」を目的としています。例えば、部活動の遠征費や日常のわずかな費用が用意できないことで、子どもが機会を失ってしまうことがあります。そうした状況を防ぐための支援です。また、「居場所基金」は子ども食堂などの運営を支えるために活用されています。
さらに、クリスマスケーキの配布などを通じて、支援員が直接家庭と関わり、継続的なつながりを築いています。活動の中で行ったアンケートでは、95%の子どもが「居場所があってよかった」、97%が「今後も利用したい」と回答しており、その必要性を強く実感しています。
見た目では分かりにくい「見えない貧困」が広がる中で、子どもたちが困難に直面したときに頼れる場所や人が地域にあることが重要です。
私どもは、これからも一人でも多くの子どもが自力で生きていけるよう支援を続けてまいります。ここでいう自力とは、自分一人の力だけではなく、他者を頼る力や甘える力も含めたものと考えております。
そのような意味において、ロータリアンやロータリークラブは、子どもたちにとって頼ることのできる存在であると感じております。
今後ともご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。本日はご清聴ありがとうございました。

国際ロータリー第2760地区 名古屋みなとロータリークラブ
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