名古屋みなとロータリークラブ

卓話Speech

2026年5月22日(金)(第2778回)例会 No.34

生きがいとIKIGAIそしてイキガイ

新井野 洋一様
愛知大学地域政策学センター 研究員
新井野 洋一

本日は「生きがい」ということについて、お話をさせていただきます。私は長年、大学で「少子高齢社会論」という講義を何十年も担当してきました。少子化や高齢化という問題を扱う講義ではありますが、最終的には「人はどう生きるのか」「どう老いていくのか」ということを学生たちと一緒に考える授業になります。

人間の人生というものを図式化して考えてみますと、多くの人は、能力がだんだん伸びていき、そして年齢とともに徐々に衰えていく、いわゆる山なりの人生を思い浮かべます。しかし私は、そういう人生を実際に送れる人はほとんどいないと思っています。人生の途中で病気になる人もいれば、途中で力尽きてしまう人もいますし、長い間、力を発揮できないまま過ごす人もいます。そう考えると、私たちが本当に目指したいのは、最後までできるだけ元気に活動し、自分の力を維持しながら生き、最後に直角に近い形で人生を終える、いわゆる「直角型の老化人生」ではないかと思うのです。

これは「サクセスフル・エイジング」、成功する老化という考え方です。そのためには、
(1)長く生きること
(2)元気に生きること
(3)目的を持って生きること
(4)誰かの役に立つこと
この四つが大切になります。

特に最後の「役に立つ」ということは、私は非常に大事だと思っています。昔、長寿研究の関係で海外へ行った際、日本人は長寿で健康だという話をしたことがあるのですが、そのとき外国の研究者から、「日本人は“誰かの役に立つ”という視点が弱いのではないか」と言われたことがありました。
それ以来、ただ長生きするだけではなく、人との関わりの中で生きるということが、とても重要なのだと考えるようになりました。

最近では、「生きがい」という言葉が海外でも “IKIGAI” として知られるようになっています。好きなこと、得意なこと、社会が必要とすること、報酬が得られること、その重なりが生きがいだという考え方です。
ただ、私は少し違和感も持っています。どうしても個人の幸せや自己実現に重点が置かれ過ぎていて、「人とのつながり」という視点が弱くなっているように感じるのです。

特にコロナ禍以降、私たちの生活は大きく変わりました。人と距離を取り、オンラインで済ませ、一人でも生活できる社会が急速に広がりました。通販やデリバリー、オンラインサービスによって、人と接しなくても生活できる時代になっています。その一方で、孤独感や孤立感を抱える人は増えています。若い世代でも、「一人でいるほうが楽だ」という考え方が強くなっているように感じます。

しかし、本当にそれだけで人は幸せになれるのか。私はそうは思いません。そこで今日は、あえてカタカナで「イキガイ」という言葉を使っています。これは、従来の「生きがい」や “IKIGAI” とは少し違います。私が大事だと思っているのは、「中間集団」の存在です。家族、学校、職場、地域、そして今日のような会もそうです。個人と社会の間には、本来こうした集団があり、人はその中で支え合い、役割を持ち、誰かと関わりながら生きています。こうした場があるからこそ、人は孤立せず、自分の存在価値を感じることができます。

私は今回、この会にお招きいただくにあたり、ロータリークラブについてもいろいろ勉強させていただきました。そうすると、皆さんが普段取り組まれている活動そのものが、まさに私の考える「イキガイ」に重なるのだと感じたのです。ロータリーというのは、単に集まって食事をする会ではありません。同じ志や関心を持った人たちが集まり、それぞれの経験や立場を持ちながら、地域や社会のために活動し、人とのつながりを築いていく場です。

今の時代は、どうしても「個人」が中心になりがちです。自分の満足、自分の成功、自分の生き方を追い求める社会になっています。しかし、それだけでは人はなかなか幸せにはなれません。人はやはり、誰かと関わりながら生きていく存在です。誰かに必要とされ、自分もまた誰かを支えながら生きる。そういう関係性の中にこそ、本当の意味での生きがいがあるのではないかと思っています。

今日この場に集まっておられる皆さんは、まさにその「中間集団」を実践されている方々です。共通の関心を持つ人たちが集まり、時間や空間を共有し、語り合い、地域や社会のために動いていく。私は、それ自体が非常に価値のあることだと思っています。ですから今日は、皆さんからお褒めの言葉をいただくというより、むしろ私のほうから、皆さんの活動に敬意を表したいという気持ちでおります。
満足感や達成感だけではなく、「協働感」や「パートナーシップ感」を感じる幸福感を目指すイキガイ。それがこれからの時代にはますます大切になるのではないでしょうか。

最後に、皆さんが最後まで元気に活動し、自分らしく力を発揮しながら、「直角型」の人生を送られることを願っております。ありがとうございました。

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