名古屋みなとロータリークラブ

卓話Speech

2025年5月23日(金)(第2742回)例会 No.34

ロボット支援手術について

加藤 祐一郎さん
名古屋掖済会病院 副院長
加藤 祐一郎さん

今回は「ロボット支援手術」についてお話させていただきます。外科医療はここ数十年で大きな進化を遂げており、その中でも近年注目を集めているのが「手術支援ロボット」の活用です。これは、従来の開腹手術や腹腔鏡手術に比べ、より繊細で正確な操作を可能にする技術であり、患者さんと医療者の双方にとって大きな利点をもたらしています。

ロボット支援手術では、術者が「サージョンコンソール」と呼ばれる操作台に座り、3D立体映像を見ながらロボットアームを遠隔操作します。ロボットのアームは手首以上の自由度を持ち、手ぶれ補正や拡大視野といった機能により、血管や神経に近い部位でも安全に手術が行えます。これにより出血量が減り、術後の痛みも軽減され、入院期間も短縮される傾向があります。

さらに、ロボット支援手術によって術者の身体的負担も軽減されることが分かってきています。従来の長時間手術では、医師の腰や首への負担が問題となっていましたが、ロボット手術では座った姿勢で操作ができるため、医療従事者の働き方改革にも寄与する技術として注目されています。
日本では2018年に胃がんや直腸がんの一部に対するロボット手術が保険適用となり、以降その対象は年々拡大しています。泌尿器科、婦人科、消化器外科など様々な領域でロボット手術が行われ、ロボット支援技術は外科医療の新たなスタンダードになりつつあります。
最近では国産の手術支援ロボットも登場し、価格やメンテナンス面での選択肢が広がりつつあります。また、AIを活用した手術ナビゲーションや、術中の画像解析による安全性向上など、ロボット技術とデジタル医療の融合も進んでいます。

ロボットはあくまで「手術を支援する道具」に過ぎません。真に大切なのは、それを適切に使いこなす知識と経験、そしてチーム医療の連携です。今後も安全で質の高いがん治療を提供できるよう、体制の整備と技術の研鑽を続けてまいります。

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■例会場
名古屋マリオットアソシアホテル(17階)
金曜日 12:30~13:30