【宮下瞳さんプロフィール】
1977年5月31日生まれ。鹿児島県出身。
所属:愛知県競馬組合 名古屋競馬場 竹口厩舎
家族構成:夫 元騎手 小山信之さん、長男・次男(小学生)の 4 人家族

【橋本美穂さんとのトークショー形式での卓話を行いました。】
昨年10月、地方競馬通算1100勝を昨年達成しました。女性騎手の中で現在一番勝たせていただいていて、女性では初の数字です。
スタート前は上手にスタートが切れるか、ということだけを考えています。

レース前に「返し馬」といって、みんなの前で見せるところがありますが、ここで「今日はいつもより元気がいい」など、馬の調子を感じたりもしています。

レース期間中は携帯電話は禁止で、預けなくてはなりません。不正防止のため外部と連絡を取ってはいけないのです。でもその分、騎手はレースに集中もできます。私は競馬場内に住まいがあり、携帯がなくても幸い子供とは会えますので困ることはありませんが、逆にレースが終わった後にご飯作ったりもしています。騎手になったきっかけは、鹿児島で祖父が馬を飼っていて、私も幼稚園のころから馬の世話をしたり馬に乗ったりしていたので、自然になろうと思いました。兄も名古屋競馬場で騎手をしていて憧れたのもあります。

騎手になるには、まず免許をとるため、栃木県の地方競馬の騎手の学校に3年間行かないといけないです。同期で女性はおらず、他の15人は男性。脱落する人もいます。体重が重たくなったり、夜逃げして朝になったらいなくなっていたという人もいました。

御覧いただいているのは、名古屋競馬8/8 第6レース。1着でゴールした映像です。この時は最初勝てるとは正直全く思っていませんでした。手ごたえはありましたが、行く道がなく、どこをあけていこうかと探っていました。最後の直線でやっと自分の進む道があき、ここから抜け出せて勝つことができました。

レースのない時は、AM0:30には起きて1:00前には馬の世話や調教を始めています。馬の数も多く、夏は夜明け前の涼しい時間帯にやった方が良いですし、やはりいい馬に乗せてもらうためにはこうした地道な努力が大切だと思っています。主人も名古屋競馬場で調教師をしていますので、夜の9時には子供より先に夫婦で寝て、子供が寝たころに仕事場に。6:30前には主人が自宅にいったん戻って、子供を起こしてご飯を食べさせて、私も一度自宅に戻り、子供達が学校に行くのを見送って、また調教に戻る、という生活です。女性ジョッキーも増えてきましたが、私のようなママさんジョッキーはいないので、ママさんジョッキーの先駆け的存在になれたらと思います。

結婚は2005年。ジョッキー同士です。同じ騎手として、アドバイスをもらったりして尊敬できる存在でした。でもレースになったらライバルです。なので、デートの時も作戦などは絶対に話しませんでした。レース中は、邪魔されたら私は怒りますし(笑)。主人が私と違って優しい性格なのです。

思い出深いのは、2006年夫婦で1位同着というレース。絶対自分が勝ったと思ったのですが、写真判定では見事にきれいに並んでいました。
結婚後に、韓国で開催された世界の女性騎手だけのレースに出場。ここで優勝したのをきっかけに、しばらく韓国競馬に身を置きました。日本に戻り、出産を機に引退。子育てに専念したかったので、戻る気はありませんでした。子供たちにもママが騎手だったことも言っていませんでした。ある日、長男が、私が馬に乗っている写真を見て「ママが馬に乗っている姿を見てみたい！」と言われ、その一言で復帰を決めました。しかし復帰は簡単ではありません。騎手の免許を引退と同時に返納してしまったので、もう一度取り直さなければなりません。厩務員をしたり、走ったり泳いだりと体力、筋力をつけ、さらにもう一度試験（学科・面接・実技）を受けました。

復帰してからは、子供たちが、応援してくれているのでつらいと感じることは何もありません。逆に私が負けて落ち込んで帰ってきても「また次頑張って！」と言ってくれて元気になれます。名古屋競馬場は昨年4月に移転してリニューアルされて、きれいで、パドックが近くて馬を間近で見ることができます。ぜひ遊びに来てください。
ネット中継の映像をライブで見ながら馬券をネットで買う事など、楽しみ方も広がりました。最近長男が「僕も騎手になろうかな」って言い始めました、今、私は1100勝をすぎたところですが、日々自分の記録を積み重ねて、息子と一緒に馬に乗れる日を目標に頑張っていきたいと思います。これからも応援よろしくお願いします。