名古屋みなとロータリークラブ

卓話Speech

2024年2月16日(金)(第2695回)例会 No.25

プロキャディーに学ぶポジティブ思考法バックナンバー >

杉澤 伸章様
プロキャディー
杉澤 伸章

今年で、プロキャディー歴25年になりました。これまで、たくさんの選手のキャディーをさせて頂きました。丸山茂樹選手や宮里優作選手など、延べ数にして50名以上の選手のキャディーをしてきました。良い思い出もたくさんありますが、ほとんどが苦い思い出ばかりです。よく辛い思いの数ほど良い思いをすると言いますが、その言葉は適切ではない気もします。

私が感じているのは「数」でいうと圧倒的に苦い思い出になります。それでも、振り返ると良い人生だと私は思っています。なぜでしょうか? それは、良い思い出の1回は、苦い思い出の100回と比例するぐらい、良い思い出の印象が強いのです。嬉しい事があるとあんなに辛かったと感じていたことも、忘れる事ができるのですね。

さて、私達キャディーのお仕事のご紹介をします。月曜日はコースチェック、火曜日は練習ラウンド、水曜日はプロアマ、木曜日~日曜日は試合、日曜日の夜は次の会場に移動です。

月曜日は、一人でコースを歩き戦略を考えます。選手の持ち球や調子などを考えて、選手になったつもりでコースと向き合います。特に、起きそうなミスを想定します。失敗をする前提として、失敗して良い方向やバンカー、絶対にしてはいけない失敗は何か?などを考えながら歩きます。例えば、中日クラウンズが行われる和合コースの1番ホール。右のラフは失敗しても良いが、左のバンカーや林に入れてはいけない。バンテリン東海クラシックが行われる三好カントリー倶楽部の16番パー3は、左の崖は絶対にしてはいけない失敗です。右のバンカーはむしろ狙い目となります。

火曜日は、選手と練習ラウンドをしながら、月曜日の情報をアップデートします。私は3ウッドで守りのマネジメントと感じたホールでも、選手が、「構えやすい流れを作りたいからドライバーで行く」となれば、そこはドライバーでのティーショットを選択します。このとき、18ホールのティーショットのクラブが決まればOKです。木曜日からの試合の当日にバタバタしないよう、ある程度の戦略を立てます。

水曜日は、プロアマ。スポンサー様方と楽しいラウンドをします。そんな中、昨日決めた戦略を見直しながらホールを消化します。選手たちは、この地点で風向きが変わった場合、ピンのポジションが難しい場合、優しい場合など、色々なことを想定し始めています。

そして、木曜日から試合開始です。ここからは、基本的な戦略を持ちつつも、状況によって臨機応変にマネジメントしていきます。特に初日は、丁寧にプレーをします。練習と試合では全く違う雰囲気になります。

よくアマチュアの方が、練習場とコースでは違うと言いますが、プロも同じような現象は起きます。そのギャップをなるべく小さくするために私達キャディーはいるのだと思います。スタート前の状況から選手の状態を把握します。なんだか浮かない顔しているなとか、逆にテンション高すぎるなとか、練習場で良い球が出ているなとか、逆に全く思うようなスイングが出来ていないな、など、選手の絶好調が100%だとしたら、精神的、技術的、それぞれ何%の状態かを把握します。この時に、何%かわかったら、第三者が、それを100%に近づけようとすると思いますが、私は、その状態のままで良いと思っています。(厳密には今はその状態で良い)

なぜなら、選手は本能的に100%に戻そうとするからです。そこで第三者が追い討ちをかけたら、選手はオーバーヒートしてしまうと思います。とはいえ、何もしないのも存在理由がないので、キャディーとしてすることは、まずは、自分自身が【良い状態】でいることを心がけます。その上で、なんでも話をして大丈夫だよ。という【オープンな状態】を作ります。そうすると選手は、話しかけてきます。最初はゴルフ以外のこと、徐々にゴルフのこと、などなど、会話の内容はなんでも良いのです。とにかく話をすることで自分の声を耳で聞き「気づき」が生まれるのです。自分自身が自分自身の良い状態になるためには自分自身の気づきや感覚が必要です。人にいろいろ言われたからと言って調子が上がるわけではないと思います。

ちなみに、スタート直前が何%かを把握出来たら、そのパーセンテージの中でベストを尽くす戦略を考えます。例えば、50%の場合、50%の状態で出来る戦略を立てます。例えば、ピンまで残り150ヤード、絶好調ならピンから4.5メートル以内を狙います。しかし、本日は50%なので、9メートル以内で良いわけです。その時、同じ9メートルでもグリーン上とグリーン外があるので、グリーン上の9メートル以内を狙います。そうすれば、調子が違ってもスコアに大きな変化は起きません。

僕は「言う」のではなく「聞く」ことこそがアドバイスだと思っています。あの人いつも良いアドバイスくれるよなーという方を想像してみてください。何人かはいるはずです。そういう方は、基本、聞き上手じゃないですか?

最後にポジティブ思考の話です。ここまで私が話をして来たことは、基本「準備段階」の話です。つまり、ポジティブにいるためには、どれだけ準備が出来ているかということです。その準備力を上げるコツは、「ネガティブになる事」です。ネガティブになればなるほど、心配事が増えます。そうすれば、あれもこれも調べておこうとか、持っていこうとか、練習しておこうとなります。ネガティブになる事をマイナスに捉える方も多いと思いますが、【ネガティブこそがポジティブの親】だと思います。私が経験して来た選手は、準備力をとても大切にしていました。あらゆる失敗を想定して試合に挑んでいます。アマチュアでもしないようなミスも、もし出たらどうする???など、常に想定しています。

ポジティブな状態を「どんな時も冷静」という言葉に置き換えた時、なぜそれが出来るのかも同じ理由です。冷静でいられる理由は、どんな失敗も、想定内にあるからです。そして、その際の対応策を検討済みであることから、冷静に対応出来るのです。それでも世の中絶対大丈夫はないです。なので、ある程度準備出来たら、実戦に挑み、あとは臨機応変に対応するという柔軟性が必要です。その実践で得た経験を、次のネガティブ要素にして、研究していくことの繰り返しだと思います。

ゴルフはどんなスポーツか聞かれたら、私は、「リカバリーゲーム」だと答えます。つまり、失敗が前提にあり、それをリカバリーしていくことでスコアを作ります。その状態を楽しいと思えるようになるまで、しっかり準備をする事をお勧めします。

今日のお話が、スタート30分前にコースについて、練習せずにスタートして、首を傾げているアマチュアの方に届けば嬉しいです(笑)

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